CONCEPT
会社法・商業登記法に基づく会社の基本

会社に関する基本的な話題を会社法や商業登記法の観点から分かりやすく記載したいと考えています。

また、できるだけ実務に即した内容で、かつ肩がこらないものにしたいと思います。

労働法や会計法の観点では記載していませんので、その方面については他のサイトをご覧ください。


それでは、以下に記載を開始します。

 1項
会社をつくると法人格を取得する。

事業をしている個人が「会社をつくる」と何が変化するか?

様々なことが変化しますし手続も必要になりますが、もっとも基本的なことは「会社が法人格を取得する」ことだと思います。

「法人格を取得する」とは、具体的には権利や義務の主体になれるということです。

「法人格」とは、広辞苑によると「法律上の人格。自然人または法人の権利能力のこと。」と記載されています。

法律上の権利義務の主体となる資格のことで、紛らわしいですが会社などの法人についてだけのことではありません。

ちなみに自然人とは「人」のことです。


「会社が法人格を取得する」とは、つまり設立した個人とは別個の法人格を持つということです。

ですから、会社自体が不動産や動産などの所有者になったり、会社自体が借り入れをして債務者になったりできます。

設立した個人とは法人格が全く別です。


たとえば、

大谷さんが一人だけで100億円を出資して「大谷MLB株式会社」をつくったとします。

そしてその後、「大谷MLB株式会社」が50億円で球場を購入したとします。

この場合、球場の所有者は「大谷MLB株式会社」であって、大谷さんではありません。

また、「大谷MLB株式会社」がフリーマン銀行から10億円の融資を受けた場合、

10億円の債務者は「大谷MLB株式会社」であって、大谷さんではありません。

(話を単純にするために、保証人については考えません。)

このように「大谷MLB株式会社」に権利や義務が帰属します。

権利や義務の主体となれるということです。


以上のように「会社が法人格を取得する」ことは、会社をつくることによる非常に大きな効果です。

このことが理解できないと、以後の様々な手続などが理解できないことになります。

 2項

法人と自然人

ついでに記載すると・・・

私たち生身の人間が物を所有したり債務者になったりできることは普通に理解できると思います。

つまり、私たち生身の人間は法人格を持っています。

そしてそれは生まれながらにして当然に持っています。

これに対し会社などは法律によって法人格を与えられています。

このように法律によって法人格を与えられている主体を法人と言います。

ですから会社は法人です(会社法3条)。

法人に対して生身の人間を自然人と言います。

 3項

会社の債権者は出資者に請求できるか?

出資者と会社は別の法人格を持っているということは、つまり・・・

1項で例に出した

大谷MLB株式会社が予想に反して巨額の損失を出してしまいました。

球場も手放してしまい、会社の財産は何も残っていません。

フリーマン銀行から受けた10億円の融資は、まだ8億円残っています。

大谷MLB株式会社からの返済が滞って会社からは一銭も取れないた場合に、フリーマン銀行は大谷さんに請求できるでしょうか?

簡単な問題です。

当然、大谷さんには請求できません。(保証やその他は一切考慮しませんので・・・)

大谷さんと大谷MLB株式会社の法人格は全く別個だからです。


このようなことを法人格の分離原則と呼ぶことがあります。

 4項

法人格否認の法理

何事にも例外は付きもの

上記の3項で法人格の分離原則について記載しましたが、法人格の分離原則をそのまま適用してはまずい場合もあります。

たとえば、

ロバーツ氏は、パドレス銀行からの借金の返済に困ることを見越して、

自分の財産に対する強制執行を防ぐ目的でLA株式会社をつくって、

その会社に自分の財産を移転した。


この場合、外形上はロバーツ氏とLA株式会社の法人格は別ですので、

パドレス銀行はLA株式会社に移転した財産には強制執行できません。

しかし、それでは著しく正義に反するので、LA株式会社の法人格を否定し、

LA株式会社とロバーツ氏を同一視して法的処理をする必要があります。

このような理論を法人格否認の法理と言います。


どのような場合に法人格否認の法理が認められる可能性があるかというと、

①法律の適用を避けるため法人格が濫用されている場合

②法人格が形骸化している場合

の2つの場合があるとされています。


上記パドレス銀行も①に該当することを裁判で認定されれば、

法人格否認の法理が適用される可能性があります。


ただ、この法理ですぐに問題が解決するとは考えない方が良いと思います。

 5項

会社の登記について

会社と取引するために必要なこと

個人を相手に取引する場合は、その個人を確認すれば良い。

免許証やマイナンバーカードなど写真付きの物を使って個人の確認ができる。

しかし、会社の場合は少々難しい。

4項のLA株式会社がロバーツ氏の自宅にある場合など、

本当にLA株式会社があるのか?

あるとしても誰の行為を会社の行為と見れば良いのか?

など個人よりも分かりづらい。

そんな不便を解消するために会社の登記が存在している。

各地の法務局(登記所)で証明を取れば、会社の様々な事が分かる。

ただ現在は、司法書士事務所などでは、法務局に行かず短時間で登記情報が取れる。

なおかつ、費用が法務局の窓口でもらうよりも安い。


ただし、会社という存在がバーチャルであることに変わりは無いので、何かと注意を要する場合があることを理解すべきである。

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